ミハーイ・ホッパール著 村井翔訳『シャーマニズムの世界』青土社、1998.4(1994)
ハンガリーの著名なシャーマニズム研究者ミハーイ・ホッパールの本邦初訳となる著作である。この人のシャーマニズムは、ほぼM.エリアーデの定義に従って、「シベリアおよび中央アジアの諸民族の太古以来の信仰体系」(p.15)ということになっており、本書で扱われているのはそれらの地域と若干のその周辺ということになっている。本書はテクストによる説明は最小限に押さえ、ひたすら図版・写真によって構成されており、まあ、「資料をだらだらと並べただけだ。」、という批判も可能なのだろうけれど、それぞれの資料はとても貴重なものだし(ソ連邦崩壊で紹介が可能になったものも多数あるらしい。)、私などは特に「太鼓」に描かれた文様に興味を引かれてしまった。エリアーデの大著『シャーマニズム』が、図版が全くなかったために想像力を駆使しつつ読まざるを得なかった事を思い出しつつ、これからシャーマニズム研究をやろうという方は両著を並べて読み進めればよいのだな、などと思い、逆にまた私自身のシャーマニズム研究の成果の提示にあたってとるべきスタイルをどうしようかなどと、考えさせられてしまった次第である。(1998/04/22)