大木昌著『病と癒しの文化史 東南アジアの医療と世界観』山川出版社、2002.09
現在のインドネシア共和国における文字通り「病と癒し」に関し、土着のものの存在、そこへのヒンドゥー・イスラム・西欧近代それぞれの影響による歴史的変化その他を描き出す。本書で描かれた、疾病観や、疾病への対処法である医療というものが、いかに歴史的・政治的・経済的な脈絡によって変化・変貌を余儀なくされる移ろいやすいものであること、あるいは恐らくは土着のものと思われる疾病観その他が、後に入ってきたものと融合・対立し複雑な様相を産み出していくプロセスなどは誠に興味深いものである。これこそが、疾病観や医療を含む「文化」というものの特質なのだろうけれど、それを具体的な形で如実に示してくれる好著ではないかと思った次第。以上。(2003/01/05)