菊池聡著『予言の心理学―世紀末を科学する―』KKベストセラーズ、1998.8
認知心理学者である著者による予言論。本欄で既に取り上げた『超常現象の心理学』の姉妹版とも言えるのだけれど、当然の事ながら話題が予言や占いを巡ってのものに集中している分、より踏み込んだものになっている。しかし、この出版社(ごめんなさい…。)にしてこの装幀では、「トンデモ本」に思われてしまったのではないかと危惧するのだが、内容は全く逆で、寧ろ、「と学会」へのオマージュがあとがきにある通り、「全てを疑ってかかる」という態度が貫かれている。という事は、予言や占いへの懐疑の根拠となる事例を執拗な位に記述し、「何故予言者が信じられるのかと言えば、それは要するに『予言が当たった。』からなのだけれど、予言が当たったように見えるのは実のところ錯覚などの心理的現象による。」という基本的テーゼを示すのと同時にまた、そうかといって「予言や占いは非科学的である。」「予言や占いは有害である。」といった言説に対しても、「将来当たった予言と現象との相互関係が科学的に立証される可能性はある。」「予言や占いはカウンセリング的な機能を持っており、有効に働くこともある。」の様に述べることで、クギを刺す。結局は、何が正しいとか誤りなのかを決定、というよりは実のところろくな根拠もなく断定することよりも、思考を止めない事こそが重要なのだ、という著者の姿勢には同調したいと思う。尚、以上の「」内の記述は本文からの引用ではなく私の勝手な要約なのでご注意下さい。(2000/06/25)