Danny Boyle監督作品 『127時間』
ご存じダニー・ボイル(Danny Boyle)監督による劇場版映画最新作である。超傑作である前作『スラムドッグ$ミリオネア』のスタッフが再び集結した本作は、登山家であるアーロン・ラルストン(Aron Lee Ralston)による大ベストセラーの自伝『奇跡の6日間』(原題Between a Rock and a Hard Place。日本語訳は小学館から出てます。)に基づいた作品となっていて、先に行なわれたアカデミー賞では6部門ノミネート、という偉業を達成している。ちなみに主演のラルストン役は、『トリスタンとイゾルデ』(2006)という映画にトリスタン役で出演していたこともあるジェームズ・フランコ(James Edward Franco)が務める。付け加えておくと、アカデミー賞では主演男優賞にノミネートされている。
物語は非常に単純。アーロン・ラルストンの名前をWikipediaで調べたりしてしまうと展開が読めてしまう、というか調べなくても読めてしまうのだが、まあ、一応注意。インテルを辞めて登山家への道を歩み出そうとしていたラルストンは、キャニオニング(渓谷でのややハードなハイキング、となるのだろう。)のためユタ州のキャニオンランズ国立公園を訪れていた。やや深いところまで進んだところで、悲劇は起こる。滑落した岩石に右手を挟まれ、身動きがとれなくなってしまったのだ。手持ちの水も食料もわずか。約6日間に及ぶ悪戦苦闘の末、様々な追憶と幻覚にさいなまれながら、ラルストンは最後の決断を下すのだった、というお話。
それだけの話、だということを知っていても、それだけじゃない映画になっていることはあらかじめ分かっていたので観ることには全く躊躇がなかった。冒頭から流れ続けるダニー・ボイルならではのセンスで選ばれた楽曲群、そして圧倒的なものを感じさせるカメラ・ワークと超絶的な編集技術。この映画を支えているのはまさしくそれらなのだが、ほぼ一人芝居のフランコがそこに花を添える。実に見事な快作だと思う。
この作品、良い映画を創るのには、かならずしも奇抜なアイディアを必要としないことを、改めて我々に知らしめてくれたような気がする。大事なのは、優れたスタッフと、映画制作にかける熱意、それに尽きるのだろう。ちなみにこの映画、フォックス・サーチライト・ピクチャーズ(20世紀フォックスの子会社)の配給なので、基本的にハリウッド資本。そして制作には18,000,000ドル(14億円位)ほどかかったらしいのだが、やっぱりお金だけは必要なのかな、とも考えた。以上。(2011/07/12)