西尾維新著『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』集英社、2006.08

言うまでもないことだが、本書はジャンプ・コミックスに入っている大場つぐみ原作・小畑健作画によるコミック『DEATH NOTE』(以下、「正典」)のノヴェライズである。ただし、細かいことを言うと、大場・小畑両者の名は、奥付には「原作」としてクレジットされている。
執筆を任されたのは2002年に『クビキリサイクル』(講談社ノベルスに収録。一向に文庫化されないので新書で読んじゃいました。)でメフィスト賞をとってデビュウを果たした、「戯言(ざれごと)」シリーズなどで知られる若きミステリ作家の西尾維新。基本的にサスペンスである『DEATH NOTE』正典とはややテイストの異なる、謎解き満載の本格ミステリとして読める作品に仕上がっている。
中身について簡単に述べると、本書は『DEATH NOTE』正典の前半で「夜神月(やがみ・ライト)」と対決した「名探偵・L」がかつてその解決に貢献した、タイトルにもなっているロサンゼルスで起こったとある連続殺人事件を巡っての捜査過程などを描く、外伝的な作品となっている。ちなみに、語り手は正典後半で夜神月と対決する者の一人である「メロ」で、そのこと自体も面白いのだが、最後の方を読むと、どうやらもう2冊ばかり出版予定なんじゃないかと勘ぐってしまうのだが、まあそれはいずれ明らかになるであろう。
個人的な感想を言えば、全般的にややコミカルにし過ぎたキライはあるものの(もっと言えば、コミックである正典の方が「コミカル」じゃない。)、多分西尾から見れば大学の先輩にあたるんだろうS.R.(何故かイニシャル)ばりの謎かけと謎解きは実に良く作り込まれていて、思わずうなった次第。なお、『週刊少年ジャンプ』ではある意味掟破りとも言えた正典による「キャラクタ漫画」からの逸脱はここでも別の形で引き継がれている。すなわち、基本的に「キャラクタ小説」書きであると認識しているこの作者がそこからやや逸脱して、どちらかと言えばトリックやプロットを重視した小説を中編規模であるとはいえ構築し得ているところを見るにつけ、作者の「今後」への期待を膨らませているところである。
ただ、細かいところにミスもある。114頁にある地の文「 これは、勝負ですから。」はその前の台詞に組み込まれるべきもの。もうちょい大きいものだと、162頁にある「…思いつきようがない。」に至るメロによる論証は実のところ破綻している。その理由は、「思いつく」可能性は消えないから。他にもあるかも知れないけれど、恐らく数多のサイトで検証されているだろうからそちらを参照して欲しい。以上。(2006/09/03)