ジム・ジャームッシュ監督作品 『ブロークン・フラワーズ』
ミニ・シアター系映画の巨匠、ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)の最新作。2005年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品で、全米公開は同年8月。この監督らしく極めて洗練されたロード・ムーヴィになっていて、予定調和もカタストロフィも何も無い淡々とした語り口は相変わらず見事なものだ。
主役はこのところこういう役が多い ビル・マーレイ( Bill Murray )。どういう役かというとかつてはプレイボーイでならした初老の男、といったところ。かつての恋人たちの誰かが「あなたには私との間にできた息子がいて、父親探しの旅に出た。」という手紙を送りつけてきたことから、一体差出人が誰なのかを確認すべく彼女らを一人一人花束を持って訪ねて歩く、というお話。
その女性たちというのが誠に豪華な顔ぶれで、シャロン・ストーン( Sharon Stone )、フランシス・コンロイ( Frances Conroy )、ジェシカ・ラング( Jessica Lange )、ティルダ・スウィントン( Tilda Swinton )といった具合。ついでに言うと、現在の恋人役はこれまたメジャーどころのジュリー・デルピー( Julie Delpy )が務めている。
かつての恋人たちが、訪ねていく順番に愛想が悪くなっていって、最後は…、というような展開が実に楽しい。訪ねていく側の主人公もだんだん素っ気なくなっていって、最初の方ではショップできちんと花束を包んでもらっていたのに、しまいには道ばたに咲いている花を摘んで行くようになってしまう。まあ、人間ってそういうものですよね。
既に評論を載せてあるヴィム・ヴェンダース( Wim Wenders )の映画Don't Come Knockingに何やら酷似しているようにも思ったのだけれど、そもそもジャームッシュはヴェンダースの息子みたいなものなので(映画史的に言って、ということですよ。)、その辺りを踏まえて鑑賞するとこの映画は二倍以上楽しめると思う。以上。(2006/05/25)