Steven Soderbergh監督作品 『チェ2部作』
すっかりメジャーになってしまったスティーヴン・ソダーバーグ(Steven Soderbergh)監督が、フィデル・カストロとともにキューバ革命を成功に導いたカリスマ革命家であるチェ・ゲバラ(本名:Ernesto Rafael "Che" Guevara de la Serna。長い…。)役を、同監督が作ったTrafficでアカデミー賞の助演男優賞をとったベニチオ・デル・トロ(本名:Benicio Monserrat Rafael Del Toro Sanchez。これまた長い…。)に据えて作った長編映画である。
元々は一本の長編だけれど、4時間半ほどの大作なため大体どこの国でも前後半を2回に分けて上映されている模様。日本では、それぞれ『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』というタイトルがつけられた。前者ではアルゼンチン出身の青年医師チェ・ゲバラが、フィデル・カストロらと出会い(1956年)、3年間に及ぶゲリラ戦を経てキューバ革命(1959年)を成功させるまでを、後者ではキューバを離れコンゴでのゲリラ戦参加を経た後に1966年ボリビアに潜入し、ゲリラ部隊を率い、翌年に逮捕され銃殺刑となるまでを描く。
チェの国連における演説等々を端々に挟み込み(これについては『ゲバラ選集』などにテクストあり。)、その主義主張をどちらかと言えばその言動から追う前半と、ひたすら山間部でのゲリラ活動の模様を彼の日記(有名な『ゲバラ日記』)から描きその行動から追う後者、という構成で、これはこれでうまくいっているのではないかと思う。ただ、映画としてみた場合、後半部はさすがに退屈なのも事実。2時間以上、殆どゲリラ活動しか描かれないのだ。チェの思想、行動について改めて知りたいあるいは考えたい場合、取り敢えずは前半だけ観れば良いかも知れない。
それはそれとして、これも映画として観た場合になるけれど、この映画で第61回カンヌ国際映画祭において主演男優賞をとったデル・トロの鬼気迫る演技というのはさすがに素晴らしいもので、これは観ておいた方がよい。でも、考えてみればこれについても前半だけ観れば取り敢えず良いのかも知れない。
もう一つ、このところハリウッド資本の娯楽映画を作ってきたソダーバーグが、久々に社会派の、というか端的に「左寄り」の映画を作ったことには大きな意味があるだろう。更に言えばこの映画、全くと言って良いほど娯楽性、もっと言えば芸術性すらない作風で(A.タルコフスキーの『僕の村は戦場だった』やF.F.コッポラの『地獄の黙示録』と見比べて欲しい。)、ほとんどドキュメンタリに近い。この辺りにこの映画作家の左系知識人としての気概を感じたのである。以上。(2009/02/17)