Paul Haggis監督作品 Crash 2006.07(2005)
昨年行なわれた第78回アカデミー賞で、作品賞、脚本賞(ポール・ハギス Paul Haggis & ロバート・モレスコ Robert Moresco)、編集賞(ヒュー・ウィンボーン Hughes Winborne)の3部門受賞という快挙を成し遂げた何とも深みのある作品。他にも、ポール・ハギスは監督賞に、マット・ディロン(Matt Dillon)は助演男優賞にノミネートされたが、惜しくも受賞を逃している。
ポール・ハギスという人は以前紹介したこれまた燻(いぶ)し銀のような作品である『ミリオン・ダラー・ベイビー』の脚本を書いていた人物なのだけれど、あの映画でも発揮されていた絶妙な台詞群構成能力はここでも遺憾なく発揮されている。
作品としては、ロサンゼルスを舞台とした、人種差別を主題とする群像劇となっているのだが、そもそも作るのが難しい群像劇を、サンドラ・ブロック(Sandra Bullock)やマット・ディロンといった大物や、あるいはドン・チードル(Don Cheadle)、サンディ・ニュートン(Thandie Newton)などの、どちらかというとインディペンデント系の良品に出演してきた名優達をバランス良く配してとてもうまくまとめ上げていると思う。バラバラに見えたドラマの、相互の絡み合いが終盤において徐々に明らかになっていく辺りの脚色は絶妙である。以上。(2007/01/31)