Michael Winterbottom&Mat Whitecross監督作品 The Road To Guantanamo 2007.06(2006)
原題はThe Road To Guantanamo。「グアンタナモ」というのはマイケル・ムーア(Michael Moore)監督の最新作SiCKOにも登場した、キューバ東南部に位置する米軍基地のある場所のことだけれど、米国-キューバ共和国間の長きにわたる諍いにより周りが地雷原だったりするために脱走不可能ということでかねてから収容所的に用いられていたのは割と良く知られた事柄。
この映画は、その惨状を一目見ようと戦火のアフガニスタン共和国に入国した際に米国軍からテロリストの嫌疑を持たれて拘束され、グアンタナモ基地の収容所に移送後2年以上を彼の地で過ごすという悲惨な目にあったパキスタン系英国人青年達が体験した過酷な日々を、ややドキュメンタリ風の筆致で力強く描く実話に基づいた作品。監督は英国生まれの俊才マイケル・ウィンターボトム(ichael Winterbottom)と彼の以前の作品にも編集などでクレジットされていたマット・ホワイトクロス(Mat Whitecross)が共同で務めている。
2006年のベルリン映画祭で銀熊賞(監督賞)に輝いた誠に秀逸な作品で、観るものに何ともおぞましいオリエンタリズム(要は欧米人が持つ、ヨーロッパより東の地を出自とする者達への偏見とでもいうようなもの。)の悪しき一例を提示しつつ、そんな息の詰まるような世界の中でも何とかして力強く生き抜こうとする前向きでたくましい青年達の姿を描くことである種の感動も与える、というバランスのとれた丁寧な造りが見事である。
折しも911テロ6周年という何ともタイムリな時期に鑑賞したわけだけれど、上述のムーア監督による一連の作品を観るに付け、あるいはこの作品などを観るに付け、アメリカっていうのはなんでああなんだろう、という思いを新たにしたのであった。来年の大統領選挙で何かが変わることに期待したいと思う。以上。(2007/09/14)