今野敏著『果断 隠蔽捜査2』新潮社、2007.04

遅ればせながら、そろそろ文庫化されるんじゃないかとも思う『隠蔽捜査』シリーズの第2作である。2006年刊行のシリーズ第1作『隠蔽捜査』の第27回吉川英治文学新人賞に続き、第21回山本周五郎賞、第61回日本推理作家協会賞のW受賞という高い評価を得た作品なのだが、こうなると間もなく出るはずの第3弾『乱雲』ではトリプル受賞も、なんてことを考えてしまったりする。
今回も、前作の降格人事で大森署長となった竜崎が主人公。大森署管内で強盗事件に続いてとある料理屋にて立てこもり事件が発生。竜崎の現場指揮のもと、特殊急襲部隊(SAT)によって立てこもり犯は射殺されるのだが、これを巡って警察機構内では様々な突き合いが始まり、やがて…、というお話。
相変わらず濃いキャラの竜崎の人物造形が兎に角素晴らしいのだが、本書においては特に後半における小田切首席監察官との舌戦が見事の一言に尽きる。これを読むためにだけでも購入する価値があると思う。
やや型どおりになりつつあるとは言え、次を早く読みたくなる良く出来たプロット、登場人物達の絶妙な配置、等々読み所満載。個人的には、次作において竜崎一家がどうなっていくのかが大変気になってしまう。第1弾と併せ、冬休みの読書リストに加えてみてはいかがだろうか。以上。(2008/12/21)