竹本健治著『キララ、またも探偵す。』文藝春秋、2008.05

天才作家・竹本健治による、「美少女メイド探偵・キララ」シリーズの第2弾である。正直、2冊目が出るとは思わなかったのだが、それ以前にわずか1年強というインターヴァルで続編が出てくるとは、この超寡作作家にしては余りにも珍しいというか何かあったとしか思えなかったりもするし、他の中断しているシリーズも何とかして欲しかったりするのだがそれはさておき。
さてさて、本書は結構詳しく作品紹介を書いた積もりの第1作『キララ、探偵す。』と同様に、『別冊文藝春秋』に掲載された中編3本と一つの超短編からなる作品集になっている。基本的な舞台設定というかキャラクタ紹介は第1弾でほぼ終わっているので、今回は個々のキャラ造形をより掘り下げたというようなお話が続く。第1話は主人公の乙島侑平、第2話はその天敵である相田光瑠、第3話はミス・キャンベル、といった具合。
実のところ典型的なキャラクタ小説以外の何ものでもない手法を踏襲したドタバタ学園コメディ・テイストのミステリ連作という形態を持っているのだけれど、そうかと言って竹本がこれまでやってきたような意味でのミステリの要素はさほど濃くはない。まあ、それぞれのお話毎に必ずしも平板ではない趣向がしっかりと用意されていて、その辺りにこの作家の文章エンターテナとしての覚悟というか矜持とでも言うべきものを感じ取ることが出来た次第。
ちなみに、多分このシリーズはまだ続くものと思うのだが、大きな物語に話を広げる、或は収束させていくのか(要はセカイ系な方向ですな。)、小さな物語を永遠に続けていくのか(某ネコ型ロボット系の方向ですな。)、その辺りに注目していたいと思う。以上。(2008/07/29)