Kenneth Branagh監督作品 The Magic Flute
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英国演劇界を代表する存在で、若い頃から俳優としても映画監督としても大変な仕事を成し遂げてきた鬼才ケネス・ブラナー(Kenneth Branagh)が、W.A.モーツァルト(Mozart)のオペラ『魔笛』を映画化したものである。話の舞台を第1次大戦辺りに移し、更には今日の相変わらずきな臭い世界情勢にも注意を喚起させようかというような一見大胆とも思える脚色なのだけれど、まあこれは例えばR.ワグナー(Wagner)などのオペラ上演では良くとられる方法だったりもするのでさほどの新しさは感じない。シェークスピア(Shakespeare)劇の大胆な解釈による映画化、というのがこの人が映画史において果たした最大の功績なのだけれど、何とも平凡な仕上がりで、この人でなければ作れない、という映画になっていないことがとても残念なのだった。
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そういうこともあるのだが、何と言っても問題なのは歌詞及び台詞が英語であることで、正直なところ最後まで気持ちが悪くて仕方がなかった次第。英語とドイツ語なんて親戚というより兄弟みたいなものだ、とか、英語圏ではこういうことは良く行なわれている、とか何とか言う人もあるかも知れないのだが、これだけ良く知られた作品で、個人的な話をすればヴォーカル部分の楽譜=『新装版世界歌劇全集 モーツアルト 魔笛 (世界歌劇全集) 』(音楽之友社、2003)を持っていたりするくらい慣れ親しんでいる曲なワケで、「魔笛はやっぱりドイツ語でしょ。」と思うのである。そもそも音符の作り込みがドイツ語のアクセントやイントネーションに合うようになっているのでもあるし、敢えて暴挙とまでは言わないが、こういうのは基本的に作った人=モーツァルトに失礼だ、と言っておきたい。
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元々とてもアクの強い、ハッキリ言って支離滅裂なところもあるオペラなので、この天才肌の映画監督がそういうものを素材として一体何を見せてくれることやら、と思って期待していたのだが、これなら普通にオペラを観に行けば良いのであって(と言うより、その方が断然良い。もっとお手軽に家庭でDVD鑑賞するのも良い。)、わざわざ映画化した意味、というのが殆ど分からなかった。
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観る前には18世紀の啓蒙思想だの、フリーメイスンだの、山田正紀の『ミステリ・オペラ』だのについても語ろうかと思ったのだが、やや興醒めしたのでこの辺で終わりにしたい。以上。(2007/08/14)