Gore Verbinski監督作品 The Pirates of Caribbean : At World's End
5月25日に封切られたのだから、何気に2ヶ月経っているわけだ。ハリポタ新作が始まったので、そもそもそれほど芳しくなかったらしい客足は更に鈍るのだろうけれど、さてさてこの作品、世間の評判とは裏腹に、それなりに良く出来ている、というか、結構感心しながら鑑賞した次第。
ご存じのようにこの作品は、ジェリー・ブラッカイマー(Jerry Bruckheimer)によるプロデュースのもと、ウォルト・ディズニィ・ピクチャーズが制作してきた『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの完結編にあたる。巨大イカに飲み込まれたジョニー・デップ(Johnny Depp)扮するジャック・スパロウ船長の運命は、はたまた海賊達と東インド会社との確執の行方やいかに、更には鍛冶屋にして剣豪のウィル・ターナー(Orlando Bloom)とその婚約者エリザベス・スワン(Keira Knightley)の何だかぎこちなくなってしまった関係は修復されるのか、そしてまたウィルの父は果たしてその呪縛から解放されるのか否か、等々、第2作で投げかけられた問題全てに終止符を打つべく、この第3作はスタートし、そしてそれを問題が無いとは言えないけれどもうまい具合に成し遂げていると思う。
さてさて、そういう「問題があるけど悪くはない」というところを説明しないといけないのだが、ここではまずその問題点として、例えば冒頭に出てくるシンガポール、スパロウが赴く冥界、あるいは9人の海賊長による集会の場所となる入り江、ラストの戦闘海域といった場面間のつなぎがどうもうまくいっておらず観客に世界把握をしずらくさせていること(海図をもっとうまく使えばよかったのに、と思う次第。)、登場人物や語られるエピソード群も多すぎかつどうにも未整理でゴチャゴチャしていること、という二つを取り敢えず挙げておきたい。
ただ、確かにそういう問題があるとは言っても後者の未整理問題について言えばこれでも良く絞り込んだ方なのではないか、あるいはまた一応私の基準で許し得る最低限のところまでは整理し得ているではないか、と考えられないこともない。冒頭部分などはこれまでの話を思い出す時間を与えることなくいかにも唐突かつ何らの説明無しで始まるし(ここでつまずく可能性あり、と。)、あるいは恐らく絵コンテくらいは描かれていたのではないかと思う第2弾で出てきた巨大イカとの戦闘シーンが省かれていたり、エリザベスの父が殺される場面も存在しないし、満を持して登場したキース・リチャーズ(Keith Richards)にギターを握らせておきながらもっと長い曲を弾かせなかったり、と、懇切丁寧にやっていたら4時間になっちゃいそうなのを「あった方が良いけど無くても何とかなるかなぁ」というシーンを敢えて入れないことで無理矢理3時間弱に押さえていて、それでいて語られるべきことはきちんと語っており、そうやってどうにか作品として成立させているようにも思うのだ。実は、この辺りの強引なぶった切り具合がとても気持ち良いというかある種の潔さみたいなものを感じさせていて、そこら辺のことについて多いに感心したのであった。
さて、イカ、ではなく以下余談。当然この作品と世界中で翻訳版が出ているコミック『ONE PIECE』との連動性については誰もが感じるところだと思うのだが、私などはエリザベスをナミさんとしか見られなくなっている。実はこの大変良く出来たコミック作品がこの映画に多大な影響を与えてこういう完結編が作られるに至った、と考えていたりもするのだが、最近『ONE PIECE』の方の流れは第1作『パイレーツ・オブ・カリビアン:呪われた海賊たち』に近づいている、というよりそのものズバリになってしまっている。以上。(2007/07/21)