Larry Niven著 小隅黎・梶元靖子訳『リングワールドの子供たち』早川書房、2006.05(2004)

既に紹介したラリイ・ニーヴン著『リングワールドの玉座』(小隅黎訳、ハヤカワ文庫、2005.04)に続く、「リングワールド」連作の第4弾である。
地球の公転軌道より少々大きめの直径を持つリング状建造物=リングワールドの独占権を巡る様々な勢力間の争いがいよいよリングワールドに災厄をもたらし始める、という状況下での、本編の主人公「ルイス・ウー」とその仲間たちの活躍というよりは〈右往左往振り〉を描く。あとは読んでのお楽しみ、という感じなのだが、これは前3作を読んでいないと全く楽しめない作品なのできちんとおさらいをしてから読み始めることをお薦めする。全てハヤカワ文庫に入っている。
それは兎も角、この作品の圧倒的にスピーディな展開や、あっと驚く結末からは、この作家がやはりただ者ではないことを改めて痛感させられた次第。そういうこともあるのだが、この作家の真骨頂はやはりその科学知識の豊富さと、それに加えてそういったものに対する飽くなき探求心にあるのだと思う。
でもって、それは例えば同シリーズの1作目である『リングワールド』の原著刊行が1970年なのだけれど、この偉大なる傑作には、最初に読んだ頃には気付くことはなかったのだが、要するに後にR・ドーキンス(Clinton Richard Dawkins)がまとめ上げることになる「利己的遺伝子理論」の萌芽となった諸理論が、既にその時点で取り込まれる、あるいはより正確にはうっすらと影を落としている、といったところに現われていたりする。なお、第3作以降に限って言えば、「利己的遺伝子理論」は同理論の発展も取り込む形で、かなり大胆な脚色を加えられ、より大々的に用いられるに至っている。以上。(2006/08/17)