Sofia Coppola監督作品 『SOMEWHERE』
映画人であるフランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)の娘ソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)による、『マリー・アントワネット』以来約4年ぶりの長編劇映画。ヴェネチア映画祭で金獅子賞、という栄冠に輝いた作品で、そのキャリアにまた大きなタイトルを付け加えることにもなった。
30代なのだろうイタリア系の映画スターであるジョニー・マルコ(Johnny Marco。アイルランド系じゃないかと思うスティーヴン・ドーフ=Stephen Dorffが演じている。)はホテル暮らし。酒におぼれ女の子と戯れる毎日を送る彼だが、離婚した妻レイラとの間にはクレオ(Cleo。エル・ファニング=Elle Fanning)という11歳の娘がいる。レイラの都合でしばらくクレオを預かることになったマルコ。父と娘はつかの間家族の絆を回復するが、やがて別れの時が、というお話。
そもそも前作の『マリー・アントワネット』を余り高く評価していない私だけれど、この作品でソフィア・コッポラは、その前の傑作にして彼女の映画監督としての名を世に知らしめた『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)に色々な意味で回帰すると同時に、それ以前のところまで戻ってしまったような感すらある。
この映画、その中身は違うとはいえ、映画スターと年下の女性との交流、という意味で図式的に重なっているのだが、どう見てもあそこまでの深みはない。東京を舞台にしているために東京近郊に住んでいる私からは思い入れ深いものになっている可能性もあるのだが、そういう部分をさっ引いても間違いなく『ロスト…』に軍配が上がると思う。
作品としてどう見ても軽すぎるのだ。更に言えば、映画監督の娘である自己の投影を本気でやっているのだとしたら殆ど噴飯モノ。そんなものを見せられる方の身にもなってよ、なのである。この映画に救いようがあるとしたら、エンディングのブライアン・フェリー(Brian Ferry)をはじめとした使われている音楽の面白さと、これからめざましい活躍をするはずのエル・ファニングの存在くらい、だと思う。以上。(2011/05/08)