森博嗣著『ZOKUDAM』光文社、2007.07

以前紹介した『ZOKU』の続編、というかシリーズ第2作で、例により『Giallo(ジャーロ)』に連載されていたものを単行本化したものである。どうやら前作とは違う世界の物語で、今回はZOKU側が正義、TAI改めTAIGON側が一応悪を体現する。
中身はタイトルから推察される通りの巨大ロボットもので、千葉県内にあると思われるとある遊園地に作られたZOKUの秘密基地で開発・組み立て・調整等々が進むロボット2体の搭乗員として起用されたおなじみのロミ・品川&ケン・十河(そごう)コンビが取り組まされる学習と訓練を含む日常と、敵対する組織TAIGONでやはり巨大ロボットのそれぞれ操縦者と開発者に起用されている永良野乃&揖斐純弥のコンビのこれまた訓練と調整、そして敵情視察その他に明け暮れる日々が描かれる。
主役は明らかに前作で最も輝きを放っていたロミ・品川で、とりわけ四文字熟語等々の語彙を書き連ねる手法を多用した文体がとても印象的。この作品、実は一応普通の「負け犬OL」という設定の彼女から見た巨大ロボットという工業製品やそれを取り巻くオタク文化についての印象記、といった体裁をとっていると思うわけなのだが、その実叙述の端々にかなり深い洞察が多々含まれていて、とても読み応えがある。
さて、そんな体裁をとっていることも含め、タイトルから想像されるような「ガンダム」シリーズのパロディというよりは、端的に「パトレイバー」なのではないかと思った次第。まず、テクニカルな部分の書き方が非常に細かいのだ。コスト計算や権力バランスのようなものがロボット事業においては非常に重要だ、という視点も共通している。操縦する快感、みたいなものの描写もやけに清々しかったりする。この辺のところは本書の最大の読み所になっていると思うのだけれど、この作品、そもそもそのプロットよりも記述の在り方にこそ意味があるのだから、そこのところはきちんと読み取らないといけないだろう。
蛇足だけれど、続編『ZOKURANGER』はこれまた『Giallo(ジャーロ)』に連載中。どんな話になっているのか知らないのだが、単行本化を待ちたいと思う。以上。(2008/04/08)