森博嗣著『ZOKURANGER』光文社、2009.04

以前紹介した『ZOKUDAM』の続編、というかシリーズ第3作で、例により『Giallo(ジャーロ)』に連載されていたものを単行本化したものである。再び前作とは違う世界の物語で、今回は正義側と悪側、という対立関係は設定軸としてなく、結構平和そうなとある大学内、という世界内のみで物語は展開する。
当然のように本書は五つのパートに分かれる。それぞれの主人公はロミ・品川准教授、永良野乃助教、ケン・十河助教、バーブ・斉藤准教授、揖斐純弥准教授の5人。よく見ると教授クラスがいないのだが、これは結構重要なことかも知れない。
タイトルからお分かりのように、本書は当然あの5人組の戦隊もの実写ドラマが元ネタなので、上記5人は「研究環境改善委員会」という名のグループを構成し、それぞれが黄、ピンク、青、緑、赤のコスチュームを身にまとい、「研究環境の改善」とやらに勤しむことになる、というお話。
5人いて、女性が二人だったら色々起こるよな、というようなところなのだけれど、そういう話も織り交ぜつつ、全体として、大学を既にやめてしまっている著者による、かなりストレートなアカデミズム批判の色合いの濃い作品で、やや拍子抜け。要するにこの作品、基本的にフィクションである『○○レンジャー』のパロディというよりは、むしろ大学内に現実に存在する「何とか委員会」のパロディになっているのだ。
そういうのって全然笑えないというか何というか。近年流行の事業仕分けで無くなっちゃって良い大学や学部・学科・研究所は確かに多々あるのだろうけれど、何せ知り合いが多い業界なのであんまりそういうことを言いたくないし考えたくもない、とも思ったりするのである。
取り敢えず、このシリーズはこの第3作で終了の模様。あとやるとしたら『ZOKUBALL』とか『ZOKUNOTE』とかかな、なんてことを考えてしまった。いっそのこと書いちゃおうか(笑)。以上。(2010/07/08)