第82回日本社会学会大会報告、@立教大学、2009年10月11日

伝統芸能の伝承と地域社会
                ―三重県鈴鹿市肥田町の獅子舞伝承を題材に―

本報告においては、三重県鈴鹿市肥田町における獅子舞伝承を事例として取り上げ、その概略を示しつつ、20世紀後半からの大きな社会変動の中でのその変遷を辿り、地域社会と文化伝承の関係について考察を加えた。

途絶から復活、そして再度の途絶の危機を乗り越えるといった様々な変遷を経てきた肥田町の獅子舞伝承であるが、それは中間層を欠くという年齢構成の偏り、練習参加者の慢性的な少なさ、将来見込まれる後継者不足、といった問題を抱えながらも、活況とまでは言えないものの、比較的安定したものと言い得るであろう。

このことには、旧保存会副会長の父を持つSさんが1983年以降愛知県から出生地である肥田町に復帰していること、Sさんと年齢の近い獅子舞保存に意欲的な3名が地元に残っていた、ということが大きく寄与していると同時に、保存会の中心メンバが、その発足時の小中高生が進学や就職で次々に抜けていく中、X番地や隣接地区の子供達を勧誘し、育ててきた、という努力に預かるところが大きい。

そこには、地域社会、特にここでは同学年や親戚づきあいといったネットワークが生きている地域社会の存在が文化伝承を支え、かつまた文化伝承の存在が地域社会の再編成・拡張に一定の働きをするという意味での、相互作用を見て取ることが出来るのである。

なお、当日配布したレジュメはこちらにアップしているので参照されたい。以上。