鈴鹿市郷土史研究会2008年1月研修会報告

伊勢地方に於けるミコ寄せと民俗宗教
本報告では、まずこれまでの巫俗=シャマニズム研究に関する諸研究の成果を要約し紹介しつつ、かつての伊勢地方では数多く見ることができた「ミコ」と呼ばれる呪術・宗教的職能者が巫者あるいはシャマンに分類できること、彼等を中心とした「ミコ寄せ」等といった死者儀礼を含む文化はまさにシャマニズムの一つの形であることを述べ、同地方のミコ・ミコ寄せ等はシャマニズム研究の枠組みで分析可能であり、かつまたそのようにして理解しようとすることで深い洞察が得られるであろうことを述べた。

更には、伊勢地方の巫俗に関する数少ない研究の中から桜井徳太郎による1960年代の集中的な調査とその分析を取り上げ、そこで大きく扱われていた同地方で今日も広く見られる死者供養儀礼であるタケマイリ(死後に伊勢市内にある朝熊山に登り塔婆供養をするというもの)と、こちらはほぼ衰退しきったかにみえるミコ寄せの関係に関するいまだ結論が出ているとは言い得ない問題を焦点化し、これについては例えば一つの集落での定点観測的なフィールド・ワークによる葬制・墓制や年中行事、そしてまた日常的な営み等々の綿密な分析から新たな地平を開けないだろうか、という提言を行なった。