島田荘司著『魔神の遊戯』文藝春秋、2002.08
御手洗潔(というより、キヨシ・ミタライ?)シリーズの書き下ろし最新長編。舞台は英国はネス湖畔の小さな村。大がかりな見立てバラバラ連続殺人事件と、その被害者間のミッシング・リンク、殺人予告風の手記を巡る叙述トリック、さらには前著『ハリウッド・サーティフィケイト』(角川書店、2001.08)に続いて描かれるユダヤ人問題などが絡み合い、いかにも島田荘司らしい外連(けれん)に満ちた堂々たる本格ミステリ作品になっている。やや真犯人の殺人動機がよくわからんところもあるのだが、まあ、これはこれで良いでしょう。そうそう、本作品の面白さは、既に述べた前著『ハリウッド・サーティフィケイト』の物語構成がどう考えても「これって安易な陰謀史観によるユダヤ人差別じゃないの?」とも言い得る部分を反転させ、むしろ彼等がディアスポラとして、あるいはある社会において常に異人として存在せざるを得なかった点を強調し、擁護的ないしより中立な立場で記述がなされていることにある。さすがに、抜け目がないと感心すると同時に、島田氏が現在ユダヤ人問題を真剣に考えていることを勝手に邪推した次第。というわけで。(2002/10/10)