武井宏之著『シャーマンキング(完?)』集英社ジャンプ・コミックス、1998.12-2005.01
まず最初に、前の約半分である15巻までの論評はこちらを見ていただきたいのと、この良くできたコミック作品の基本設定というか世界観は既にそこまででほぼ全て表現・説明され尽くしていたので、そういうことに関する批評はそちらで終わっていることも述べておきたいと思う。
まあ、第19巻-20巻に掲載された、猫の霊であるマタムネとイタコのアンナさんを主要な登場人物とした回想録「恐山 ル・ヴォワール」連作が恐ろしく水準の高い文芸作品にさえなり得ていることだけは述べておこう。もう、こんなものを造ってしまったらその後は大変なのである。
それは兎も角、ご存じの方も多いと思うのだが、本作品は誠に中途半端な形で、要するに完結することなく昨秋『週刊・少年ジャンプ』での連載を終えた。書き下ろし9頁が最終の第32巻に掲載されているが、これでもまだ完結とは言えない。実のところここからの物語は大体予想がつくものだし(尚、後日談は数度にわたり『赤マルジャンプ』に掲載され、第32巻にも収録されている。ここからは実に様々なことが読み取れる。)、別にわざわざ描く必要もないんじゃないかとさえ思ったのだけれど、それは措くとして、発行部数至上主義な集英社としては頭打ちとなったこの作品の連載を打ち切らざるを得なかった、というのが実状なのだろう。
連載ものというのは昔から常にシヴィアな状況に置かれているわけで、小説にしたところが中断だの未完だのといった作品は多々存在する。そういう制約の中でいかに優れたものを作り出しうるか、というのが、コミック作家が課せられた運命とも言うべきものなのかも知れない。いや〜、辛いですな。
どうでも良くなってきたので以下蛇足。完結(これがかなり笑えるのだが…、まあそれはいいか。)までに18年かかった永井豪の『バイオレンス・ジャック』(『週刊・少年マガジン』→『月刊・少年マガジン』→『週刊・漫画ゴラク』と連載誌が変転。やってられません…。)みたいな例もあるので、こうなったら別会社の雑誌で連載を再開し、一応の完結はさせて欲しいようにも思う。キャラクタの版権含めて一切合切買い取る会社はあるように思うんだが、難しいかな?まあ、そんなところで。(2005/01/18)
以下追加記事。Wikipediaの武井宏之ページからリンクが張られているけれど、「イタコのアンナさん」は青森県むつ警察のマスコットにもなっている。以下にリンクを張っておく。(2007/07/14)
青森県むつ警察署