Ethan & Joel Coen監督作品 『バーン・アフター・リーディング』
コーエン兄弟(Ethan & Joel Coen)による長編最新作である。原題はそのまま。ジョン・マルコヴィッチ(John Malkovich)演じるアル中の元CIAアナリスト、ティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)演じるその医師である妻、彼女と不倫関係にあるジョージ・クルーニー(George Clooney)演じる財務省連邦保安官、ブラッド・ピット演じるアスレティック・ジム勤務の筋肉馬鹿(Brad Pitt)、フランシス・マクドナルド(Frances McDormand)演じる彼の同僚ら5人を中心に繰り広げられるブラックなコメディである。
物語としては、元CIAアナリストが落とした彼の回顧録が入ったCD-ROMが、ブラッド・ピットらによって拾われたところから始まる。国家レヴェルの極秘情報だと勘違いしたブラピらは元CIAアナリストに対して脅迫まがいのことを始め、やがてそれは、というお話。
豪華キャストは豪華キャストなのだけれど、肝心の脚本が問題。興行収益はあがった模様だが、それは大部分キャスティングによるものだろう。要するに、コーエン兄弟は同じことを繰り返しているに過ぎない、という印象なのだ。こういうドタバタものだと、『ザ・ビッグ・リボウスキ』や、同じくジョージ・クルーニー主演の『オー・ブラザー!』なんてのがすぐに思い浮かんでしまう。そして、明らかにそれらの方が優れている。
何がいけないんだろうなぁ、と考えていたのだけれど、登場人物を類型的にし過ぎていることとか、スパイもののパロディなんていう発想がそもそも古いこととか、上に挙げた作品に見られた人間洞察の深さが垣間見られない、といったようなことなんだろうと思う。キャスト以外の全てにおいて、毎回「次はどんな手を?」と期待して観に行くコーエン兄弟の作品としてはどう考えてもBクラスなのである。以上。(2009/06/23)