東京シンフォニエッタ第25回定期演奏会。

昨日になりますが、板倉康明氏が音楽監督・指揮を勤める少人数室内オーケストラ=東京シンフォニエッタの第25回定期演奏会を聴きに行ってきました。場所は最近合唱練習でも出向くことが多い東京文化会館小ホール@上野です。

タイトルが『日本オランダ年2008-2009』となっていたのですが、その名の通り今年は日本オランダ年の2年目なのだそうで、オランダ生まれの作曲家3名の作品が取り上げられました。以下、概略を。

1. エドワード・トップ『最も美しいゴクラクチョウ』(2003) 日本初演
冒頭を飾る大がかりな曲です。基本的にA.シェーンベルクら所謂新ウィーン楽派の手法を継承しているのではないかと思いました。シェーンベルク・アンサンブルの委嘱による作品なので、当然とも言えるかも知れません。

2. ミシェル・ファン・デア・アー『メモ -ヴァイオリン・ソロとカセット・レコーダのための-』(2003) 日本初演
2曲目は打って変わって究極の少人数=ソロ曲。独奏は山本千鶴さんという方。カセット・レコーダを前にして、これの操作も自分でします。この曲、要するにヴァイオリンで音を出してそれを録音。巻き戻してそれを再生しつつ演奏、というような形でアンサンブルを構成します。かなり自由度の高い譜面なのではないか、と思いました。ちょっと見てみたいですね。

3. ルイ・アンドリーセン『ジィルヴァー』(1994)
弦楽4人とピアノ・ヴィヴラフォン・マリンバという打楽器3人が、それぞれ独立した2群として、そしてまた両者がカノンを構成するように作られた曲です。ミニマル、とまではいかないのですがそれぞれの演奏している音は基本的に非常にシンプル。リズムのズレと収束、が何とも言えないニュアンスを醸し出すユニークな曲です。ちょっと思ったのですが、これはヴォーカルのアンサンブルによる演奏も可能な楽曲かも知れません。

4. ミシェル・ファン・デア・アー『マスク -アンサンブルとテープのための-』(2006)
『メモ』と同じ作曲家によるものです。コンピュータによって制御される電子音と、管弦のアンサンブルが非常に複雑な音響を生みだす中、打楽器奏者はひたすら粘着テープを引き出している、というような構図。やがてメトロノームが鳴り始め、これに同じく打楽器奏者により黒い布がかぶせられていきます。これが「マスク」の意味するところです。

5. ユーイ・ラウケンス『ファースト・ムーヴメントとエピローグ』(2009) 委嘱初演
委嘱初演ということもあり、作曲家自身も会場に姿を見せていました。ファースト・ムーヴメントとは全体の3分の2ほどを占める管楽器と打楽器を主体とする極めてテンポの速いある意味吹奏楽的なパート。そして終盤にはそれとは打って変わった極めて穏やかで静謐な音楽が奏でられます。管楽器群の演奏能力の高さには驚き入りました。

全体を通して、非常に野心的かつバランスのとれた構成だと思いました。オランダの作曲家達が、実に色々なものを吸収し、それを世界に発信している、ということが垣間見えた気がします。今回取り上げられた作曲家達ですが、実に個性的ですね。

また、東京シンフォニエッタの演奏も実に見事なものでした。各声部、パートが基本的に一人ですので、各人のやっていることがほぼ聴き取れます。構成メンバ達のソリストとしての能力も極めて高いのでしょう。

1945年以降に作られた楽曲を扱うべく15年ほど前に結成されたこの稀有なアンサンブルの今後には大いに期待しています。ちなみに、第26回定期演奏会は12月2日。場所は同じく東京文化会館小ホール、ということです。お時間があれば是非足を運んでみてください。

と、云う事で。