『嘆きの歌』2公演、と。

去る5/18-19の二日にわたりまして、新日本フィルの第494回定期演奏会に出演して参りました。以下、簡単に報告などを。

演目は、A.ドヴォルジャークの交響詩『金の紡ぎ車』と、G.マーラー『嘆きの歌』初稿版。19世紀のおとぎ話を元にして作られた曲のセットとなります。指揮はC.アルミンク。いつものことながら、何とも面白い選曲です。ドヴォルジャークには歌は入りませんので、私は後者のみに出演しました。

『嘆きの歌』はそこそこ知られている曲ではありますが、初稿版で演奏されるようになったのは最近のこと。日本だと1998年ですね。マーラーの10代終盤という、そのキャリアのごく初期に書かれた曲です。

基本的に因果応報劇、になるのでしょう。お姫様がいて、森に咲く美しい花を持って行けば結婚できるらしい。世界中に良くあるパターンですね。ある兄弟がこの花を探して森をさまよいます。やがて、やさしい性格の弟が先に見つけますが疲れてしまったのかその場で寝てしまい、荒っぽい性格の兄は弟を殺して花を得、やがて姫と結ばれることになります。ところが、弟の骨を拾ってこれを笛にした楽士というのがおりまして、これが折しも城で開かれている婚礼の席に乱入します。王になろうとしている兄は楽士から笛を取り上げ、これを吹き始めると、そこからは兄に殺された弟の告発の声が響き渡り、城は崩壊するのでした。いやー、怖いですね。

後の『角笛』その他の楽曲群に現われるようなモティーフが随所にちりばめられていて、非常に面白いと思いました。劇的な構成は幾つかの交響曲などにもみられますが、これなどは端的な例。ホントはオペラが書きたかったんだろうけれど、結局1曲も書けなかったというのは非常に残念なところですが、この曲はそんな意味で非常に特異かつ貴重な位置を占めていると思います。

合唱は古代のギリシャ劇におけるコロスのような役割ですので、現われては消える、という感じです。曲の流れを上手くつかんでその場に相応しい歌い方で歌う、ということをこなすのが非常に大変だったのですが、個人的には曲の持つ劇的な構成をうまく出すべく、楽譜は基本的に見ないで良いようにして演奏会に臨みました。全体的にはもっと一体感を出したかったところもあるのですが、客席ではどう聞こえていたのでしょうか。

これが終わるとオケものは9月までありません。『ドイツ・レクイエム』ですね。指揮は今回と同じアルミンク。何とも凄い流れ、だと思います。

と、云う事で。