一柳慧『ハーメルンの笛吹き男』、と。

去る9/16(日)の夜、横浜の神奈川県民小ホールにて、一柳慧による世界初演となる新作オペラ、『ハーメルンの笛吹き男』を観て参りました。以下、簡単に報告などを。

朝からこんにゃく座を観て、移動しての鑑賞です。風邪の症状がどんどん悪くなっていくタイミングで、凄くつらかったんですが何とか耐えました。

このオペラ、基本的に神奈川国際芸術フェスティヴァルの一環、ということになります。今年で第19回目。神奈川芸術文化財団の芸術総監督が一柳慧であることから、こういう企画になったわけですね。

キャストは、笛吹き男:岡本知髙、市長:三戸大久、司祭:土屋広次郎という3人をメインに、基本的に歌い手は二期会。これに子供達が加わります。楽隊は特別編成のオケ16人。指揮は藤岡幸夫、となります。詳細は下記をご覧下さい。なお、リンク切れご容赦の程。

一柳慧『ハーメルンの笛吹き男』

物語自体はグリム童話などにも含まれている民間伝承ですが、以下、かいつまんで。要は、

時は13世紀末、ネズミの被害に四苦八苦するハーメルンの町にある日笛吹き男が現われ、その駆除のかわりに報酬を頂きたいともちかける。ハーメルンの人々は報酬を約束し、笛吹き男はネズミを笛でおびき寄せ、駆除に成功。しかし、あろうことかハーメルンの人々は報酬を出し渋る。

怒った笛吹き男は一旦町を去るが、再びハーメルンの町にやってくる。しかしながら、今度は人々が教会にいる間に、笛を吹き鳴らしながら子供達を連れ去ってしまう。消えた子供達の行方は、結局誰にも分からないのだった。

という言い伝えです。

この作品はこの伝承を元に、田尾下哲と長尾晃一が台本を作成。全体の流れは同じですが、市長、司祭という端的に権力側の大人を配することや、笛吹き男のキャラクタをオリジナルからかなり距離のあるヒューマニティ溢れるものにすること、あるいはそうしたことから必然的なものとなる結末部の大幅な変更などが行なわれています。

全体として、音楽がとても良かったです。特に小編成オケと岡本、三戸、土屋は本当に素晴らしかったですね。大人も子供も愉しめる作品、というコンセプトだと思うのですが、そこは一柳。一筋縄ではいかない曲であるはずなところを、実に上手く咀嚼・表現しておりました。さすがですね。

ただ、朝のこんにゃく座が余りにも完成された舞台だったせいもあると思うのですが、各演者の台詞と動き、合唱部分、照明等々にはやや未整理なところを感じずにはおれませんでした。狭い舞台に終始かなりな人数が乗っていましたが、そのせいもあったでしょうか。音楽や、作品を貫くメッセージが素晴らしいだけに、ちょっと勿体ない気がしました。

公演は計3回のラスト。今後再演される時は、きっと色々なところが手直しされるんじゃないかな、と思いました。そんな、生まれたばかりの、これから先きっと育っていくはずのオペラ作品に生で、いち早く触れられたのがこの日の収穫でした。

と、云う事で。