東京シンフォニエッタ第26回定期演奏会などへ。

随分前の話になりますが、先週の水曜日(12/2)に東京文化会館小ホールで行なわれた板倉康明氏率いる東京シンフォニエッタの第26回定期演奏会を聴きに行ってきました。簡単な報告を。

今回のタイトルは「先鋭的な名技性 Virtiosite Extremiste」となっています。この言葉の意味するところを厳密に推し量るのは大変なのですが、要するに今回のプログラムでは、先鋭的な音響を作り出すために非常に高度な演奏技法が要求される楽曲群を並べているのだと考えました。

1. ジョン・アダムス『チェンバー・シンフォニーの息子』(2007) 日本初演
基本的にダンサブルかつ舞曲風なところが多いチューン。しかしながらリズムは複雑です。今回のプログラムの中では最も聴きやすい曲ではありました。古典的な技法を基調に据えているように思いましたが、その敷衍の展開・敷衍の仕方には非常に斬新かつ鮮烈な印象を受けました。

2. ブルーノ・マントヴァーニ『ストリーツ』(2007) 日本初演
2006年にパリでP.ブーレーズによって初演された曲です。作曲家の言によると、ブーレーズに捧げられていますね。各楽器のソロが非常に面白い曲です。楽音ではないノイズが多用されているところなど、ブーレーズや、あるいはまた武満を思わせる技法が随所に現われていて、非常に興味深く思いました。

3. ヤン・ロバン『アート・オブ・メタル』(2006) 日本初演
メタル・コントラバス・クラリネットという楽器を用いた大変ユニークな作品です。この曲は特にソロが凄いですね。メタル・バスクラは本来木管のクラリネットを金管にしてしまった、ということになるのでしょう。音的にはサックスに極めて近づいています。倍音の出具合ですとか、その超絶技巧的な吹きっぷり(ちなみにソロは西澤春代さん)には大変強い印象を受けました。

4. 新実徳英『室内協奏曲I-アクア』(2009) 世界初演 委嘱作品
2楽章からなる曲だそうなのですが、今回は1楽章のみ。どこかで全曲通しで聴きたいものです。合唱曲もたくさん書いておられる新実先生ですが、管弦楽曲においてもその才能は遺憾なく発揮されています。極限的に演奏困難な曲だと思うのですが、その複雑極まりない音の粒立ち具合を堪能させていただきました。

さてさて、見ての通り初演が多いです。 素晴らしいですね。そんな素晴らしい演奏集団による次の演奏会は村上春樹の「パン屋襲撃」と「パン屋再襲撃」をオペラ化した、望月京作『パン屋大襲撃』という曲。3月ですね。そして7月には邦人作曲家の作品を集めた第27回定期演奏会、となるようです。

ついでながら、村上春樹と東京シンフォニエッタの組み合わせというのも何となく偶然ではなさそうな気がします。どうなんですかね。意図的?なお、ヤナーチェクがらみで言うと、年末に「第九+テ・デウム」を指揮してくれるチェコ出身の若手指揮者らしき方が、この日この会場にみえてました。本人かどうか確認できなかったのですが、来週オケ合わせに入るのでその時にはっきりするでしょう。

と、云う事で。