東京シンフォニエッタ第31回定期演奏会、と。

先週の金曜日になりますが、とんでもなく多忙な隙を突いて、サントリーホール・ブルーローズで行なわれておりました東京シンフォニエッタの第31回定期演奏会を聴いて参りました。

19時開演は厳しい、ですね。コンサート自体がそれほど長くないのですから、19:30開演でも良いのでは?、と思いました。実のところ19時開演なんていう習慣は日本独自のもので、欧米では20時とか21時とかが普通です。日本もそうならないかな。

そんなこんなで1ステージ目のR.ワーグナー「ジークフリート牧歌」は聴けず。基本的に1945年以降に作曲された曲を演奏するために作られたこの小オーケストラがこういう曲を演奏したのにはワケがありまして、それというのもつい先だっての5月にフランス遠征をしたようで、そこでは一般により広く知られた曲、ということでこれとこの日の3ステージ目に入っているC.ドゥビュシーのトリオが演奏された、ということによるらしいです。

てなわけで私は2ステージ目のジャン-ルイ・アゴベ作曲「クラリネットと9人の奏者のための"コンチェルティーノ"」からの鑑賞となりました。フランス公演のために委嘱されたもので、日本初演です。西澤春代さんによる超絶技巧クラリネットに、低音系の楽器群とパーカッションを中心としたアンサンブルが絡み合います。演奏者には勿論ですが、聴くものにも相当な集中度を強いる楽曲だと思いました。なお、指揮の板倉康明氏自身がクラリネット奏者ですが、見事にその特性を引き出しているように思われました。

3ステージ目は前述のようにドゥビュシー。「フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ」、です。面白い編成ですね。本年生誕150年の天才作曲家によるこの曲もまたやはり天才っぷりをあまねく発揮したもの。曲想とそのひねり具合が兎に角見事なんですけれど、そんな中、どこかで聴いたようなモティーフが随所に登場します。アゴベ氏や、あるいは4ステージ目のアタイール氏のまさしく現代フランス的な音響も、実のところその淵源はドゥビュシー辺りにあるわけで、150年に及ぶんじゃないかとも思う調性への抗いとその果てに生まれてきたもの、というようなことを思わずにはいられませんでした。

4ステージ目は上述のバンジャマン・アタイール氏による「"暗潮" ソプラノとアンサンブルのための」、です。これもフランス公演のために委嘱されたものでやはり日本初演。ソプラノ・ソロは松井亜紀さんでした。バッハ・コレギウム・ジャパンで歌っている方ですね。東京シンフォニエッタがこういう演奏会で歌ものをやることはかなり珍しいのではないかと思うのですが、非常に面白かったです。管弦楽と打楽器による(後者が非常に重要)、凄まじい音響空間が構成される中、つぶやきからシャウトまでの幅を持つ松井さんのヴォーカルがその核を明瞭に形作っていました。アタイール氏は若干22歳ですが、恐るべき才能だと思います。

ちょいと蛇足ですが、アタイール氏のこの曲、松井さんはフランス語で歌っておられましたが、印刷テクストが配布されませんでしたので、内容は掴めませんでした。そうですねー、来週末から私もフランスに行くわけですが、実際問題として結構な数の日本語曲を演奏します。やっぱり内容を伝えないと、と思うんですよね。誰かフランス語訳作ってくれないかな、って多分時間ないですけど。訳しにくいというか、殆ど不可能じゃないかと思われる曲ばかりなんですよね。

東京シンフォニエッタの次回出演は8/31(金)にサントリーホールでJ.クセナキスの『オレステイア』を、ということになっています。指揮は期待の新星・山田和樹氏ですね。これは何とか早退なり何なりして聴きたいな、と思っております。その次の第32回定演は10/13(土)で西村朗特集なんですが、私自身が本番(G.ヴェルディ『レクイエム』)を抱えているので聴きに行くことは出来なさそうです。残念!

と、云う事で。