James Tiptree, Jr. Up The Walls of the World

ようやくジェームズ・ティプトリーJr.の未邦訳長編Up The Walls Of The Worldを読み終えました。1978年に出たものですが、私が手に入れたのは1984年のAce版。ちょっと酸性紙な感じが気になったのですが、何とか最後まで読めました。えらく時間かかりましたけど...。

簡単に中身を。Tyree(発音は「タイリィ」、でしょうか。)と呼ばれる風の中を飛び回るエイのような知的生物が住む世界は突如として現われたDestroyerと名付けられた存在の活動のために破滅に向いつつあった。そんな中、Tyreeの知的生物たちは生き残りをかけてその魂を我々人類の中に転移させようという試みを始める。一方地球ではDaniel Dannという医者のESP能力を持つ患者達が軍の指揮下に置かれて様々な実験を課されようとしていた...。

というような話です。冒頭ではTyreeの「女性」であるTivonel、Destroyer、Dannという三者の視点で、そしてまた三つの舞台で話が進行しますが、やがては相互に行き交うようになりますので話は複雑化します。種の、あるいは世界そのものの存亡を賭けた、というような感じの壮大なスケールと圧倒的にユニークな発想を持つ傑作だと思うので、未邦訳なのはいかにも勿体ないところですね。

なお、付け加えると、フェミニストSFの代表的な書き手であるこの人の持ち味は、Tyreeにおける「男性」「女性」の役割分担が人類のものとは大きく異なっている、というようなところに端的に現われていて、この辺りも興味深く読みました。今日ではこういう設定はさすがにベタ過ぎかな、とも思いますけれど。

大体読後感はこんな感じなのですが、さてさて、次は何を読みましょうかねぇ。

と、云う事で。