VOX GAUDIOSA第13回定期演奏会。

本日、寒風吹きすさぶ中、第一生命ホールで行なわれた松下耕氏率いる室内合唱団VOX GAUDIOSAの第13回定期演奏会に行って参りました。事前にさりげなくTOKYO CANTATのちらしを挟み込んだりもしました。自宅から持って行きましたが、重かった...。

そんな話はさておき、本題へと。と言いますか、以下、演奏順に感想などを。

1. ルネサンス・バロック期の宗教曲3曲。T.L. de Victoria、H.Isaac、H.Purcellという、時代も出身地も異なる3人が書いた曲が演奏されました。3.で松下氏自身が書いたミサ曲をやる関係で、構成に悩むステージだったのではないかと邪推します。合唱の原点である、ルネサンス・バロック期の曲を頭に持ってくることには賛成ですし、意義も理解できるのですが、いっそのこと世俗曲で固めても良かったかも知れません。2.以降がとても素晴らしかったせいもありますが、ややとってつけた感が否めませんでした。

ステージ構成についてはそのような感想を持ちましたが、以下演奏の中身について。演奏力の高さは良く分かるのですが、この段階ではもう一つ乗り切れていない感じ。25名程度の人数なので、互いにアイコンタクトし合いつつ歌うようなところがあっても良かったのではないでしょうか。個人的には、この時期の曲には他時期・他様式のものにかなり上乗せした一体感があるべき、と思ってます。ついでに申し上げると、このステージは楽譜から目が離れない時間も最も長かったですね。

2. Veijo Tormis : Sügismaastikud エストニアの作曲家、ヴェリヨ・トルミスによる『秋の風景』と題された組曲です。1964年の曲。それ自体非常に良い曲なのですが、この合唱団もいよいよ本領発揮と言いますか、正直圧倒されました。ここへ来て、緻密さ、繊細さと強靱さの両方を兼ね備えた非常にバランスの良い合唱団だな、ということが良く分かった次第。突出した声が全く聞こえない、各パートが見事に溶け合った、実にバランスが良い演奏です。更に言えばこの曲、良く歌い込んでいるな、という感想を持ちました。音に迷いがほとんど感じられませんでした。

3. 松下耕 : Missa Tertia por choeur mixte a capella 指揮者本人の作曲による『ミサ曲第3番 -無伴奏混声合唱のための』です。土俗的なメロディ、やや通俗性を帯びた音楽構造を持ちつつ、古典的な手法と現代的な和声を緻密に織り込んだ作品。大変分かり易く、そしてまた野心的な曲だと思います。同規模(=30人弱)の合唱団クール・シェンヌの委嘱作品ということもあり、ベスト・マッチング。そしてまた宗教曲に非常に合う会場の音響の良さも手伝い、非常に充実した演奏でした。

4. 松下耕 : 日本の民謡 第6集 混声合唱のための『茨城巡礼』 これも指揮者本人による、そのライフ・ワークとも言える民謡集から。佐倉囃子を伝承する3名の器楽奏者(篠笛、太鼓、鉦)との共演です。舞台上を前後に動き回るため、音響が変化し、それがとても面白かったですね。単純なことですが、後ろに引けば子音より母音が、前に出れば母音より子音が良く聞こえるようになります。もう少し子音が聞こえて欲しかったところもあるのですが、ハッチャケ感と端正さが両立した演奏だったと思います。

アンコールは3曲ほど。中でも武満翼は懐かしかったですね。またやりたいな、と思いました。

全体として、非常に有意義な午後を過ごさせていただきました。ありがとうございます。ちなみに、本日のベスト・パフォーマンスはやはり2.になりますでしょうか。個人的趣味も入ってますが。バルト3国好きなんですよね。何であんなに良い曲が書けるんだろう、と。いずれどこかで歌う機会を作りたいな、と思います。

と、云う事で。