広井良典『コミュニティを問いなおす』

私設サイトの書籍紹介欄に、広井良典による第9回大佛次郎論壇賞受賞作『コミュニティを問いなおす ――つながり・都市・日本社会の未来』を追加しています。

ローカル性、多様性といった価値観は今後見直されるべきもの、なのだけれどそこにおいてコミュニティというものが本来持っていた外部に開かれた性質、そしてまたグローバルな価値観を無視することや捨て去ることは問題、というのが著者の基本的な主張だと思います。まあ、結局のところバランス感覚が大事、ということなのでしょう。

とても野心的で、多岐にわたる話題をうまくまとめた、しかもお買い得な好著だと思いました。でも、もう少し、具体的な事例=それこそどこかのコミュニティにおいて、例えばそこでローカル性とグローバル性がどう衝突し、どうなったのか、どうなりそうなのか、みたいな話をしてくれると、良かったと思います。

決してこれは無い物ねだりではないでしょう。私の考えでは結局のところ、「現場において起きていること」というのが最も重要なんです。想像や推測をするのは簡単なんですが、現実をつぶさに観察し分析し、文章化・資料化するのはとても難しいことなのです。色んなものが絡んできますからね。でも、社会学者の仕事って、そういうことなんだと思ってます。

と、云う事で。