宇都宮大学混声合唱団第44回定演、と。

千葉でも初雪なんじゃないかと思われる本日ですが、宇大混声の定演を聴きに宇都宮の栃木県総合文化センタ・メインホールまで足を運びました。

実のところ、雪なんてどうでも良くて、体調が非常に悪いんですね。風邪なんでしょうけど、熱は特に高くない、でも鼻とのどが今年に入ってからずっと死んでます。鼻が先で、のどが後にいかれました。取り敢えず現状咳が出るのが非常に困る。良くなっているような気もするのだけれど、乾燥したところや気温の低いところにはちょっと行きたくない、というような具合。

なので、鼻が詰まっていたり、咳を我慢したりしてちょっと集中出来なかったのですが、以下、簡単に感想を。相変わらず全然簡単じゃなくなりましたが...。

演目は3ステージ、計3曲です。このシンプルさは本当に素晴らしいと思います。

1. 林光 マザー・グース・メロディー 
野上彰の訳詞による作曲です。アカペラとピアノ付きの計4曲からなります。ピアノは寺嶋陸也氏で、指揮は学指揮の菅家君。調べてみますと、1957-1958年に作られた曲なのですね。なんと、50年以上たってます。4曲のどれもが後の林作品を胚胎してますが、3曲目の「まがりくねった男がひとり」なんてのはまさにその典型。溌剌として、そしてまた非常に丁寧な演奏だったと思いました。

2. 寺嶋陸也 鈴木敏史の詩による6つの合唱曲 朝顔の苗
指揮は栗山文昭先生で、ピアノは作曲者である寺嶋陸也氏でした。このところこの曲を聴く機会が増えていますが、聴くたびに印象が変わりますね。違う演奏団体なので当たり前ですが、この曲、噛めば噛むほど、というところも多々あります。2005年から作曲されはじめ、年々曲が加わり最終的に全6曲に。出版譜は2009年12月に刊行されています。誠に愛すべき曲を、栗山&寺嶋という最強コンビ+とても純粋でなおかつ一本筋のある音楽性を持っているように思う宇大で聴けたのは良かったな、と思います。詩人によって紡がれた珠玉の言葉と楽曲の良さがそのまま表現された見事な演奏でした。

3. 林光 狼森(オイノもり)と笊森(ざるもり)、盗森(ぬすともり)
本日のメイン・イヴェント、です。宮沢賢治が書いた同タイトルの童話に(ちなみに、ここに原文が出てます。)林光氏が曲を付けたもの。1998年に合唱団じゃがいもが委嘱した作品で、音楽劇という形をとります。

今回の指揮は栗山先生で、合唱の他に、幾つかの楽器が入ります(詳細省略)。そして、演出は加藤直氏。なので、現在コーロ・カロスが準備をしている合唱オペラ『アシタ ノ キョウカ』と同じ作り手による作品、ということになります。付け加えますと、カロスも2000年公演で扱っています。

って、説明が長くなりましたが、宮沢賢治らしい、自然と人とが常に共存関係にあることを忘れちゃ駄目だよ、人間も自然の一部なんだよ的な思想を含む、エコロジーの先駆とも言える寓話を、シンプルかつ必要充分な舞台構成と演出で、誰の目にも耳にも分かりやすく表現していたように思いました。そこそこ長い作品ですが、あっという間に終わった、という感じでした。非常に愉しかったです。

余談ですが、この童話(そもそも童話なんだろうか、とも思いますが。)、基本的に森の命名神話なり名前の由来譚の形をとってまして、更には構成が四方祓いっぽいというか、結構道教っぽかったりします。陰陽五行(木火土金水)ね。賢治自体は法華信徒ですが、その作品に現われる世界観には非常に興味深いものがありますね。賢治研究者が多いわけだな、と改めて思いました。

話を戻しまして、全体のまとめです。全曲日本語で計3曲、テーマにも共通するところの多い非常にコンセプトの明確な、まとまりのあるコンサートだったように思います。きっと稽古は大変だったに違いない宇大の皆様、お疲れ様でした。

と、云う事で。