東京シンフォニエッタ第30回定期演奏会、と。

去る12/3(土)、東京文化会館小ホールで行なわれておりました、東京シンフォニエッタによる記念すべき第30回定期演奏会を聴いて参りました。以下、報告などを。

1年前の第28回定演=湯浅譲二特集が佐治敬三賞を受賞、そして今回は一柳慧特集です。何だか凄いですね。まあ、それはそれは凄かったんですが。

1曲目は一柳の提案により、彼が最も重要だと考えているらしい作曲家K.シュトックハウゼンの曲を取り上げていました。『ツァイトマッセ 5人の木管奏者のための』(1955-1956)です。うーん、複雑極まりない曲ですね。各パートのテンポ指示が物凄いことになっているらしく(そもそも一律じゃないっぽい)、5人のアンサンブルなのだけれど指揮者必須のようでした。五声部でどこまで複雑に出来るか、なんていう実験性も感じましたね。

2曲目からは全て一柳慧作品です。まずは『弦楽四重奏曲』(1956-1957)。上の曲とほぼ同時期ということになります。ベルクやシェーンベルク、あるいはヴェーベルン、更にはバルトークの弦楽四重奏曲をちょっと想起しました。4楽章構成で、比較的明瞭な音像を持った曲です。古典的な様式も踏まえつつ、その若き日において既に相当高度な飛躍も成し遂げていたことが良く分かる作品だと思います。

3曲目は一気に最近の曲に飛びます。『ビトウィーン・スペース・アンド・タイム 室内オーケストラのための』(2001)。空間と時間の間、です。間だらけですね(笑)。ここでようやく東京シンフォニエッタが勢揃い。50年間積み上げてきたもの、ということになりますね。随所に効果的な形で用いられているトランペットとホルンが私の中に非常に強烈な印象を残しました。

4曲目は再び小編成ものへと。『トリオ・インターリンク ヴァイオリン、ピアノ、打楽器のための』(1990)です。ピアノは一柳自身によっています。何とも感動的な光景でした。「インターリンク・フェスティヴァル」という一柳が立ち上げた音楽祭のために書かれた曲なのだそうですが、非常に良い曲だと思いました。

休憩を挟んでの5曲目は再び一柳自身のピアノを。『レゾナント・スペース クラリネットとピアノのための』(2007)です。ここでも「スペース」という語が用いられていることには注目すべきでしょう。非常にシンプルな小品ですが、随所に作曲家のセンスが光ります。演奏は比較的しやすいのではないか、と思いましたがどうなのでしょう。

そしてラスト。今回の目玉と言って良いでしょう委嘱作品。『交響曲第8番 ―リヴェレーション2011 室内オーケストラ版』(2011)です。一応4つのセクションからなっておりまして、それぞれ予兆、無常、祈り、再生、と題されています。一柳自身がプログラムに寄せた文章の中で語っていますが、2011年頭の、あの災害、そして事故が念頭にあったのだそうです。ここまで5曲聴いてきて、ある意味「一柳大回顧」、をしてきたことになるわけですが、恐らくはそれによって、この曲が、一柳の作曲家としての集大成的なものであることが強く感じられました。大変な作品であり、かつまた演奏も本当に見事なものでした。

以上です。

毎度のことながら、斬新なサウンドにびっくりさせられもし、そしてまた新鮮な感動を味わわせて頂いております。これからも、これはもう「孤高」と言って良いのかも知れない凄い演奏会をお願いします。まずは、フランス公演の成功を心より祈念しております。

と、云う事で。