合唱団イクトゥス第6回演奏会、と。

先週の土曜日(6/16)になりますが、降りしきる雨の中行なわれた、千葉市で活動している合唱団イクトゥスの第6回演奏会を聴きに京葉銀行文化プラザ音楽ホールに出向いてきました。開演18:30がJRの遅延の影響で少し遅れて18:40くらい。第1、2、4ステージの指揮は常任の高橋英男さんが、第3ステージはKenPこと佐藤賢太郎さんが自作曲を客演で振る、といった趣向でした。

ちなみに、結構お客さん入ってましたね。来年の5月5日(日)に同団の第7回公演にしてVocal Ensemble ≪EST≫とのジョイントコンサートが予定されておりますが、会場はまさにこのホール。音響やアクセスなどは千葉県内で一番良いんじゃないかと思ってますが、この日以上の盛会になると良いですね。

それは兎も角、以下、簡単に感想などを。

第1ステージはスウェーデンのコーラス・グループ=The Real Groupが、当時84歳になっていたはずのEric Ericsonを迎えて録音した名作Stämning(2002)に収録されていた曲を中心にした構成。全曲歌詞はスウェーデン語なので、指導者のエリンさんもアルトに参加。やさしさに溢れた、とてもかわいらしい演奏で、原発再稼働や増税などといったいやなニュースでちょっとささくれ立っていた心がほどよく和みました。

第2ステージは、ホールの大きさと合唱団のスケールに一番マッチしているのではないかと思う古楽・ルネサンスものによる構成。第3ステージとペアになっているところがミソで、こちらでは時系列を逆転させ、キリストの復活から始まって以後受難、誕生とさかのぼり、最後は受胎告知で終わる。逆に第3ステージは受胎告知から始まって復活で終わる、という趣向です。

さてさて、この合唱団、30人くらいという人数ですとか、一人一人の声質などはきっとこういう様式の作品をやるのに一番良いと思うのですが、問題はパートバランスだと思いました。端的に申しまして、内声が基本的に聞こえないんですね。ベースがでかい、という意見もあったそうですがそれは多分間違いで、どっちかと言えばテナーとアルトが弱い。そうですねー、基本旋律っぱなしなんだからもっと積極的に歌い続ければ良いのに、と思いました。他声部に闘いを挑むくらいなところがあっても良いのじゃないかと。各声部が良いバランスで出たり引っ込んだりするところがポリフォニィの面白さなはずなんだけれど、終始外声部だけで進行しているように思えてしまった次第です。

第3ステージはKenPステージ。KenPの曲はESTでも何曲か歌ったことがあるのですが(彼の指揮でも一回、です。非公式な場、でしたが。)、基本的な路線はやはりKenPのもの。イエスの生涯を綴る結構血湧き肉躍る感じの曲に仕上がっていて、非常に愉しめた次第です。KenPの指揮は初めて後ろから見ましたが、いやー、実に端正ですね。そして適度に熱い。そんなこともきっとプラスに働いて、合唱団も第2ステージのやや消極的な印象から一変して、ガラッとチェンジしたように思えました。これが私が選ぶこの日のベスト・ステージでした。

第4ステージは三善晃による名曲『クレーの絵本第1集』全曲。例のギターとシンバルが入るやつです。日本語曲で何となくホッとしてしまったのですが、この曲、そう一筋縄で行くものでもありません。どう考えても天才な三善さんの、しかも脂の乗り切っていた時期の、そして代表曲の一つですからね。三善さんのゾクゾクするような和声展開感であるとか、日本語という言語を徹底的に分析・計算し尽して作られた音像みたいなものの表出を果たすためには、一人一人がそういうことに自覚的でないといけないんですよね。正確に楽譜を再現するのは本当に難しい曲だと思います。前のステージから引き継いできた全体的な勢いには素晴らしいものを感じましたが、勢いを捨てないでそれに加えて一段上の緻密さが欲しい、と思いました。

まとめますと、いにしえのサウンドから今日のものまで、とてもバランス良く配置され、更にはひねりも適度に加わった本当に良く考えられた選曲のコンサートだと思いました。個々人の努力、そして高橋さんの熱演、あるいはまた客演指揮や楽器奏者といった多彩なゲストにも支えられた、実に感動的な演奏会でした。非常に愉しめました。

以上です。

終演後、打ち上げにも参加させて頂きました。お誘いありがとうございました。更なるご発展を祈念しております。

最後になりますが、やはり気になる来年5月5日の第7回公演について。見事にTokyo Cantatのクロージング・コンサートとかぶっているわけですが、何らかの形で関われないかな、などとも思っています。一期一会ですしね。そして、多分、というか間違いなく合同ステージもあるのでしょうから、ね。

と、云う事で。