大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団第16回東京定期演奏会、と。

こうやって書いてみると結構長いタイトルになりますな。そんな当間修一(以下、敬称略)率いる大阪シュッツの創立35周年記念にして、第16回目となる東京公演を聴きに第一生命ホールまで出向いて参りました。

一応大阪シュッツの定演、と銘打たれてはいますが、実際には管弦楽団であるシンフォニア・コレギウムOSAKA(SCO)と、大阪コレギウム・ムジクム(OCM)合唱団との合同コンサートみたいな感じでした。ああ、ちなみに集合関係で言うと、大阪シュッツ⊂OCM合唱団⊂OCM⊃SCOなのだと思います。間違っていたらごめんなさい。

以下、4ステージの感想などを簡潔に。

1stはアルヴォ・ペルトの「巡礼の歌」。元々は弦楽四重奏と独唱のために書かれたものとのことですが、今回の演奏は男声合唱と弦楽アンサンブルによる版です。弦楽部隊によって作られる重層的な音響の中、テナー/ベース各群が、同じ音高の斉唱を行ないます。面白いです。不思議な空気が生まれていました。

2stはB.バルトークの『弦楽のためのディヴェルティメント』BB118。弦楽アンサンブル20数名のよる演奏。余りにも有名な曲だし、名演奏も多々あります。恐らくかなり演奏は大変なのだろうと推測しますが、というか大変なんでしょうけど(笑)、これが非常にみずみずしくも華やか、そして重厚さもある、見事な演奏でした。合唱団の演奏を聴きに行って、一番感動したのがこれ、というのもなんだかミイラ取りが、みたいな話なんですが、実際そうだったのでした。

3stでいよいよ大阪シュッツのメンバ32名が勢揃い。曲は西村朗の『鳥の国』。今年度の委嘱作とのことです。事前に西村、作詞家の佐々木幹郎、当間修一によるプレトークが入りました。去年栗友会では西村の『敦盛』という曲を委嘱初演でやりましたが、技法的にはかなり似ていました。畳みかけるような言葉、言葉、言葉、そして口笛、足踏みですね。チベット・シンバルはなかったですが。さすがにプロなので、掛け値無しに素晴らしい演奏でした。ちょっと怖いくらい。

そうですね~、やっぱり、合唱やってる限りはこういう音を出したいと思うわけですよ。一人一人がイイ発声して倍音満載、各人がちゃんと他声部を聴いてそこから音を作ってる、ヴィヴラートは基本的に無し、故に凄くハモります。当たり前のことなんだけど、なかなか出来ることじゃない。まあ、簡単に出来たら誰も苦労しませんけど(笑)。この合唱団、絶対に一度は生で聴くべきですよ。倍音が鳴るって、あるいはハモるってどういうことなのかが体感出来ると思います。

4stはこの団体との縁が非常に深い千原英喜の『いつくしきのり』。昨年度の委嘱作品です。プレトークは千原と当間の対談。コテコテの関西系ですね(笑)。この曲、物凄い編成でして、SCOとOCM合唱団(⊃大阪シュッツ)による演奏となりました。使用楽器が非常に多様。基本的にシアター・ピース作品であり、『日本書紀』からの主に聖徳太子に関わるテクスト群が、動き回る歌い手・語り手達によって発話され、そこに様々なパフォーマンスが重ねられる、というもの。タイトルの「いつくしきのり」とは要するに「憲法」。ここでは聖徳太子の「十七条憲法」のことを指します。野心的で、かつまた一回性の美学を徹底化したとも言える作品の、記念すべき東京初演に立ち会うことが出来て、非常に幸せだったと思います。

以上です。大阪シュッツの演奏会だと思って行ったのですが、全然違いました(笑)。まあ、非常に面白かったし勉強になったので問題ないです。でも大阪シュッツのみによる合唱曲オンリーの演奏会を一度聴いてみたいな、とも思いました。

と、云う事で。