舞台の最近のブログ記事

一昨日(7/20)になりますが、勝どきにある第一生命ホールで行なわれておりました、山梨県の合唱団、アンサンブル・カーノの東京公演を見て参りました。以下、ごくごく簡単に感想などを(以下全て敬称略)。

演目は最近個人的にも触れる機会が非常に多い長田弘による詩をベースにしたシアターピース作品で、信長貴富作曲『食卓一期一会』です。指揮は依田浩、ピアノ・須永真美、演出・齋藤千津子、照明・木下泰男そして監修に作曲者自身、というスタッフ構成でした。

この曲、もともとアンサンブル・カーノが委嘱した作品ということになります。この合唱団、山梨県を拠点に活動しているわけですので、東京公演というのは相当な勇気と覚悟が要ったのでは、と慮りますが、まあ、間違っていないでしょう。

ソロあり、たぶん全員による独白あり、合唱あり(当たり前ですが)、振り付けありの作品ですが、非常にクオリティ高く、そしてまた暖かい雰囲気が会場を満たすような公演でした。堪能させていただきました。

加えて、やはり大変な才能と言いますか、楽曲が素晴らしいですね。諧謔さと批評精神に満ちた、傑作だと思います。ちょっと楽譜が欲しくなった次第。

最後になりますが、ちょっと驚いたのが、その集客力。このホールで立ち見、というのは今まで見たことがなかったですね。きっとメンバの努力と人徳によるものと思いますけれど、このあたり、見習いたいところです。

と、云う事で。

先週の金曜日(28日)になりますが、サントリーホール・ブルーローズで行なわれておりました、JCAA(日本作編曲家協会)主催によるコンサート、The Chorus Plus、に出演してまいりました。以下、簡単に報告などを。

平日なので、14時過ぎから始まるリハーサルに出るためには基本的に仕事を休まざるを得ないわけです。今回は楽器が入りますし、会場も慣れ親しんだところではありませんのでリハーサルは必須。そんなわけで、割と早い時間から溜池周辺へと満を持して乗り込みました。

さてさて、何せ9曲の初演を含むコンサートですので、混声合唱団 空 と、女声合唱団 暁 のみなさんの曲も是非聴きたい、と思っていたわけですが、1曲(糀場富美子によるもの。以下敬称略。)を除いてそのリハーサルを聴くことができました。実にラッキーでした。

プリぺヤード・ピアノを使った猿谷紀郎の何ともすさまじいものから、ハープを中心に据えた先鋭的な原田敬子作品、そして一柳慧によるチェロをフィーチュアした20年ほど前の名曲に湯浅譲二によるごく最近作曲された非常に美しいアカペラ曲まで、実にヴァリエーション豊かでしたね。難曲ぞろいだと思いましたが、見事にこなしておられました。

一通りのリハーサルが終わり、しばしの休憩を挟んで19時から本番です。

我々が演奏するのは木下牧子、小六禮次郎、寺嶋民哉、徳永洋明、山下康介、渡辺俊幸という6名の作曲家による、合唱と何かの楽器(ギター、ピアノ、チェロ、ハープ、トロンボーンといったもの)を組み合わせた作品です。ちなみに、木下作品は女声のみで、小六作品はアカペラ、でした。

今回は結構練習したなー、と言いますか、個人的にもちょっと凪みたいな時期だったので、じっくり取り組めました。適度な緊張感の中、自分の役割は一応果たせたのではないかと思います。

2時間半くらいにわたる長いコンサートでしたが、ヴァラエティ豊かな構成、有働由美子アナウンサーによるアドリブ満載の司会進行、各作曲家らによるトークなどなど、質量ともに非常に充実したものだったのではないかな、と思っています。感想などお聞かせいただければ、と思う次第です。

最後になりますが、私自身の次回出演は8月終盤、草津国際音楽アカデミーでの『ドイツ・レクイエム』になりそうです。その前に何か入るかもしれませんが...。取り敢えずご期待ください。

と、云う事で。

先週の日曜日(8/12)になりますが、珍しく午後の練習が無かったので(8月だから?)、文京シビック大ホールで行なわれておりました、お江戸コラリアーずの第11回演奏会「お江戸の新世界」を聞いて参りました。簡単に感想などを記したいと思います。以下、基本的に敬称略です。

まあ、暑い中大変、だったと思います。なんか色々ありましたね~。それはさておいて、と。

第1ステージはドイツ・ロマン派特集。難易度的には一番大変なステージだったのではないかと思います。F.メンデルスゾーン、M.レーガー、R.シュトラウス、R.シューマンといったラインナップで計5曲。80人くらいの大所帯ですので、ロマン派曲らしいうねるような感じもところどころに出ていたように思いました。ただ、個人的な感想としては、ドイツ語のニュアンスや和声の微妙な変化などをうまく吟味・咀嚼しつつ、音色や響きのレヴェルでもっと多彩かつ的確な表情付けがあっても良かったかな、と思います。実現するのは大変難しいんですけどね。

第2ステージは信長貴富の新しい曲『じゆびれえしよん』。詩は山村暮鳥によります。男性合唱曲に新たなヘヴィ・ローテーションなレパートリが加わった、という感じでしょうか。これは今後頻繁に演奏されそうですね。暮鳥がクリスチャンだったこともあり、詩には勿論、音楽にもかなり宗教曲的な色彩が加わっています。決して平易なものではない言葉のニュアンスをうまくとらえ表現した、端正でみずみずしい、そしてまたしっかりした演奏だと思いました。

第3ステージはシー・シャンティ集6曲。海の労働歌、ということになりますでしょうか。男声合唱では結構良く歌われるものです。スタートでちょっとトラブルがありましたが、力強い、迫力のあるステージだったと思います。文京シビックは音響的には割とデッドだと思うのですが、この種の曲にはこういうホールの方が向いてますね。

第4ステージはこの日の目玉ということになるのであろう、三善晃『遊星ひとつ』の全曲演奏。4曲からなる組曲ですが、連弾ピアノを必要とします。で、1、3がアカペラで、2、4がピアノ付き、というあたりにもこの曲の難しさがありますね。歌ったことないですけど(笑)。有名な曲ではありますが、技術的にも体力的にも、あるいはまた音楽的な深さという点でも演奏するのはかなり困難なはずのこの曲を、そつなくキチッと仕上げてくる辺りはさすがといったところでしょうか。ついでに書いておきますと、この中の2曲を全日本合唱コンクールで演奏する模様です。更に磨きをかけていって下さい。

アンコールは松下耕の新曲と「斉太郎節」の新しいアレンジ、でした。後者はホントに良かったです。これが、私が選ぶこの日のベスト・アクト、でした。最初からこんな感じだと良かったかな、などとちょっと思ったり(笑)。

と、云う事で。

南フランスのメディアがこんなものを作ってくれました。是非ご覧下さい。リンクが切れないことを祈ります。

Festival-des-Choeurs-Laureats 2012

ちなみに、動画は最後のフルメンバでのコンサートの模様です。私は常時ほぼセンタですね。

と、云う事で。

去る5/18-19の二日にわたりまして、新日本フィルの第494回定期演奏会に出演して参りました。以下、簡単に報告などを。

演目は、A.ドヴォルジャークの交響詩『金の紡ぎ車』と、G.マーラー『嘆きの歌』初稿版。19世紀のおとぎ話を元にして作られた曲のセットとなります。指揮はC.アルミンク。いつものことながら、何とも面白い選曲です。ドヴォルジャークには歌は入りませんので、私は後者のみに出演しました。

『嘆きの歌』はそこそこ知られている曲ではありますが、初稿版で演奏されるようになったのは最近のこと。日本だと1998年ですね。マーラーの10代終盤という、そのキャリアのごく初期に書かれた曲です。

基本的に因果応報劇、になるのでしょう。お姫様がいて、森に咲く美しい花を持って行けば結婚できるらしい。世界中に良くあるパターンですね。ある兄弟がこの花を探して森をさまよいます。やがて、やさしい性格の弟が先に見つけますが疲れてしまったのかその場で寝てしまい、荒っぽい性格の兄は弟を殺して花を得、やがて姫と結ばれることになります。ところが、弟の骨を拾ってこれを笛にした楽士というのがおりまして、これが折しも城で開かれている婚礼の席に乱入します。王になろうとしている兄は楽士から笛を取り上げ、これを吹き始めると、そこからは兄に殺された弟の告発の声が響き渡り、城は崩壊するのでした。いやー、怖いですね。

後の『角笛』その他の楽曲群に現われるようなモティーフが随所にちりばめられていて、非常に面白いと思いました。劇的な構成は幾つかの交響曲などにもみられますが、これなどは端的な例。ホントはオペラが書きたかったんだろうけれど、結局1曲も書けなかったというのは非常に残念なところですが、この曲はそんな意味で非常に特異かつ貴重な位置を占めていると思います。

合唱は古代のギリシャ劇におけるコロスのような役割ですので、現われては消える、という感じです。曲の流れを上手くつかんでその場に相応しい歌い方で歌う、ということをこなすのが非常に大変だったのですが、個人的には曲の持つ劇的な構成をうまく出すべく、楽譜は基本的に見ないで良いようにして演奏会に臨みました。全体的にはもっと一体感を出したかったところもあるのですが、客席ではどう聞こえていたのでしょうか。

これが終わるとオケものは9月までありません。『ドイツ・レクイエム』ですね。指揮は今回と同じアルミンク。何とも凄い流れ、だと思います。

と、云う事で。

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